中央病理診断
目的
Hirschsprung病およびその類縁疾患(H類縁)は、腸の神経節細胞の異常により腸の動きが低下し、便秘や腸閉塞のような症状を引き起こす疾患である。特にH類縁は、神経節細胞が存在するにもかかわらず腸の機能が正常に働かず、診断が難しい病気である。
これらの疾患は非常にまれであり、診断と治療には高度な専門知識が求められる。適切に治療するためには、手術前や手術中に病変部の腸の組織を顕微鏡を用いて正確に診断することが重要である。
活動の概略
我々は、Hirschsprung病およびH類縁の正確な診断を目的とし、全国の専門施設と連携した「中央病理診断」を行っている。複数の医療機関から寄せられた腸管組織の病理標本を顕微鏡を用いて検査する。病理診断は統一基準で行い、診断の精度向上と均てん化を図っている。
また、診断結果をデジタル化し、専門医が迅速かつ正確な診断を共有できるシステムを整備している。これにより、診断の遅れを防ぎ、適切な治療をより早く患者に提供することが可能となる。さらに、蓄積したデータを活用し、より良い診断・治療法の確立を目指している。
この取り組みにより、H類縁の早期診断と適切な治療の提供が可能となり、患者の生活の質(QOL)の向上に貢献することを目指している。
ゲノム診断グループ
目的
本グループの目的は、国内の希少難治性消化器疾患患者に対するゲノム診断体制を構築することである。
希少難治性消化器疾患において、遺伝的要因を明らかにすることは、確定診断や個別医療の実現、分子病態解明にも繋がり重要度が高い。そこで、本グループでは、診療、研究の両面からゲノムの原因特定を推し進め、希少難治性消化器疾患のゲノム医療へ貢献することを目指す。
活動の概略
希少難治性消化器疾患のゲノム解析について、全国から臨床情報・検体収集、ゲノム解析、解釈、結果還元を行える一連の体制構築および実践(図1)に加え、ゲノム解析の技術開発など研究開発も行う。
ゲノム解析相談窓口は、国立成育医療研究センター内にて、ヒルシュスプルング病、ヒルシュスプルング病類縁疾患などの希少難治性消化器疾患を対象に、研究班内の各疾患グループなど横断的に相談、検体を受け、状況に応じて通常の網羅的ゲノム解析または迅速ゲノム解析を実施する。解析は、全ゲノム解析、全エクソーム解析、遺伝子パネル解析などを用いる。技術開発については、Laser microdissectionを用いた微小病変部位の集中的解析の開発(モザイク解析を含む)やadaptive sampling(Oxford Nanopore社)による迅速遺伝子パネル解析法の開発など先端的開発を行う(図2)。既に、迅速全ゲノム解析により1週間程度で患者の原因を見出し診断、より適切な治療へとつながった例などがある。
Laser microdissectionによる選択的病変部位解析図2:解析法開発

Adaptive samplingによる希少難治性消化器疾患遺伝子パネル解析図2:解析法開発

新規治療適応疾患の抽出と新規治療の開発
目的
慢性希少難治性消化管疾患に対する新規治療の開発
活動の概略
臨床症状の重症度から、新規治療適応疾患は、ヒルシュスプルング病類縁疾患のなかでも慢性特発性偽性腸閉塞症(CIIP)、巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症(MMIHS)と広域型ヒルシュスプルング病とが妥当であると考えられた。CIIPとMMIHSについては、背景に遺伝素因があり、モデル動物の開発や将来的には遺伝子治療の対象になると考えられ、遺伝子改変技術を用いたMMIHSのゼブラフィッシュモデルを開発した。広域型ヒルシュスプルング病については、近年の腸管神経系発生や腸管の蠕動機序の解明に伴い、腸管神経系の再生医療が注目される分野である。動物モデルの研究においては、移植した腸管神経堤由来細胞(ENCCs)が神経細胞やグリアへ分化し、腸管の機能が回復する事が確認されている。また、多能性幹細胞(iPS細胞・ES細胞)も無限の増殖能を持ち、期待される細胞腫の一つであるが、腫瘍形成のリスクがある。このため、脱落乳歯幹細胞(SHED)などの体性幹細胞の方が、実臨床への応用にはより適している可能性があると考え、安全性および治療プロトコールを確立するための研究に着手している。
重症腸管不全モデルの作成

脱落乳歯幹細胞の特徴

小児歯科・成人歯科からの難病対策
目的
出生後、口からの栄養摂取が困難で、食べるために重要な口唇や舌を動かす機会が少ない状況が継続されると、哺乳や離乳食によって獲得される口唇や舌の機能が十分に発達できないという問題が生じる。また、口から味や形を有する食べ物を摂取する経験が十分でないと、食事を口から摂取することそのものへの拒否行動が見られる場合もある。
治療後、経口栄養へスムーズに移行するためには、経管栄養中から口唇や舌を刺激して口腔機能の獲得を促し、口から食事を摂取するための環境を整える介入が必要である。しかし、このような出生直後からの口腔機能獲得支援については、その実践方法が十分に確立されていない状況にある。
我々は、経管栄養を経験した小児の口腔形態や口腔機能の実態を調査し、経管栄養を経験した子どもたちの歯・口腔粘膜の状況、噛み合わせ、口唇や舌の動きといった口腔機能の特徴や問題点を明らかにして、具体的な口腔機能獲得支援方法を考えていくことを目的とした活動を行っている。
活動の概略
歯科受診状況、う蝕経験の有無に関する調査
最初に歯科受診をしたのはお子さんが何歳の時ですか?
食事に関する問題点についてのアンケート調査
現在、食事に関することで問題を感じていますか?
歯科医療の面からのサポートが必要であると考えられます。
小児慢性特定疾病/指定難病制度
目的
研究対象疾患の医療費助成制度等の情報を集め、各疾患担当グループへ情報提供を行っている。小児慢性特定疾病や指定難病の追加疾病検討の際には、難病政策の観点から助言を行っている。本研究班の研究対象疾患は先天性であり、出生直後から外科的手術をはじめとする様々な医療介入が必要となる。また、難しい病気が多いため、長期にわたり日常生活に影響を及ぼすことがある。
本横断研究グループは、小児慢性特定疾病や指定難病に対する医療費助成制度をはじめとした医療施策との連携を図ることを目的としている。
活動の概略
本研究班にて疾患研究が進められ、エビデンスに基づく診断基準や重症度分類、診療ガイドラインの作成や改訂が実施されている。この成果を受けて、徐々に医療費助成制度の対象となる疾患が増加してきた。
| 研究対象疾患 | 小児慢性特定疾病 | 指定難病 |
|---|---|---|
| 慢性特発性偽性腸閉塞症 | ● | ● |
| 巨大膀胱短小結腸腸管 蠕動不全症 | ● | ● |
| 腸管神経節細胞僅少症 | ● | ● |
| ヒルシュスプルング病 | ● | 全結腸型、小腸型 |
| 非特異性多発性小腸潰瘍症 | ● | ● |
| 総排泄腔外反症 | ● | ● |
| 総排泄腔遺残 | ● | ● |
| 肝巨大血管腫 | ● | ● |
| 短腸症 | ● | ● |
| 食道閉鎖症 | ● | |
| 腹部リンパ管腫 | ● | 頭頚部 |
| 中間位・高位鎖肛 |
令和7年4月現在
小児期には複数の医療費助成が利用できる可能性があるが、国制度である小児慢性特定疾病医療費助成制度と、居住自治体の独自制度である乳幼児こども医療費助成制度との併用が望ましいと考えられている。また、小児期に利用できる医療費助成制度のほとんどは、成人になると利用できなくなるため、医療費がかさむ場合や医療介入が多く必要となる場合には、指定難病制度への移行が望まれる。
目的が異なる制度間の移行を目指すため、それぞれの制度についての理解が大切である。関係する方々に制度や政策について、少しでも理解を深めていただけるよう活動を行っている。

